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保育所保育指針
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   第三章 六か月未満児の保育の内容

1 発達の主な特徴
  子どもは、この時期、母体内から外界への環境の激変に適応し、その後は著しい発育・発達がみられる。月齢が低いほど体重や身長の増加が大きく、次第に皮下脂肪も増大し、体つきは円みを帯びてくる。
  また、この時期の視覚や聴覚などの感覚の発達はめざましく、これにより、自分を取り巻く世界を認知し始める。感覚器官を含め、すべての身体発育や行動の発達は子どもが生来持っている機能の発達によることが大きいが、こうした生得的、生理的な諸能力の発達も、その子どもが生活している環境、特に周りの大人との温かく豊かな相互応答的な関係の中で順調に促進される。
  身体発育や行動の発達は、まさしく子どもの身近な環境との相互作用の結果であり、この時期はその出発点である。
  この時期の子どもは発達の可能性に満ちているが、大人の援助なしでは欲求を満たすことはできない。
  しかし、子どもは、笑う、泣くという表情の変化や体の動きなどで自分の欲求を表現する力を持つ。このような表現により子どもが示す様々な欲求に応え、身近にいる特定の保育士が適切かつ積極的に働きかけることにより、子どもと保育士との間に情緒的な絆が形成される。これは対人関係の第一歩であり、自分を受け入れ、人を愛し、信頼する力へと発展していく。
  生後三か月頃には、機嫌のよいときは、じっと見つめたり、周りを見まわしている。周りで物音がしたり、大人が話していると声のする方をみる。足を盛んに蹴るようになる。寝ていて自由に首の向きを変えることができ、腹ばいで頭を持ち上げるようになり、動くものを目で追えるようになる。小型のガラガラ等を手にあてるとすこしの間握ったり、振ったりする。微笑みも生理的なものから、あやすと笑うなど社会的な意味を持ちはじめる。子どもの要求の受け止め方や大人の働きかけに対して快と不快の感情が分化してくる。
  「ア・エ・ウ」等の音を出したり、「ブーブー」とか「クク」という声を出す。授乳中に哺乳瓶に触れていたり、いじったりする。満腹になり乳首をくわえたまま気持ちよさそうに眠ることもある。
  保育士はこのような子どもの行動に気づき、感受性豊かに受け止め、優しく体と言葉で応答することにより、子どもは自分がした行動の意味を理解するようになり、特定の保育士との間で情緒的な絆が形成される。
  生後四か月までに、首がすわり、五か月ぐらいからは目の前の物をつかもうとしたり、手を口に持っていったりするなど手足の動きが活発になる。
  また、生理的な快、不快の表出は、感情を訴えるような泣き方をしたり、大人の顔を見つめ、笑いかけ、「アー」「ウー」などと声を出すなど次第に社会的、心理的な表出へと変化する。さらに、身近な人の声を覚えたり、また、音のする方向に首を向けたり、近づいてくるものを見たり、ゆっくり動くものを目で追うようになる。生後四か月を過ぎると、腕、手首、足は自分の意思で動かせるようになり、さらに、寝返り、腹ばいにより全身の動きを楽しむようになる。
  また、眠っている時と、目覚めている時とがはっきりと分かれ、目覚めている時には、音のする方向に向く、見つめる、追視する、喃語を発するなどの行動が活発になる。

2 保育士の姿勢と関わりの視点
  子どもの心身の機能の未熟性を理解し、家庭との連携を密にしながら、保健・安全に十分配慮し、個人差に応じて欲求を満たし、次第に睡眠と覚醒のリズムを整え、健康な生活リズムを作っていく。また、特定の保育士の愛情深い関わりが、基本的な信頼関係の形成に重要であることを認識して、担当制を取り入れるなど職員の協力体制を工夫して保育する。

3 ねらい
 (1) 保健的で安全な環境をつくり、常に体の状態を細かく観察し、疾病や異常は早く発見し、快適に生活できるようにする。
 (2) 一人一人の子どもの生活のリズムを重視して、食欲、睡眠、排泄などの生理的欲求を満たし、生命の保持と生活の安定を図る。
 (3) 一人一人の子どもの状態に応じて、スキンシップを十分にとりながら心身ともに快適な状態をつくり、情緒の安定を図る。
 (4) 個人差に応じて授乳を行い、離乳を進めて、健やかな発育・発達を促す。
 (5) 安全で活動しやすい環境の下で、寝返りや腹ばいなど運動的な活動を促す。
 (6) 笑ったり、泣いたりする子どもの状態にやさしく応え、発声に応答しながら喃語を育む。
 (7) 安心できる人的、物的環境のもとで、聞く、見る、触れるなど感覚の働きが豊かになるようにする。

4 内容
 (1) 一人一人の子どもの健康状態を把握し、異常のある場合は適切に対応する。
 (2) 一人一人の子どもの心身の発育や発達の状態を的確に把握する。
 (3) 体、衣服、身の回りにあるものを、常に清潔な状態にしておく。
 (4) 一人一人の子どもの生理的欲求を十分に満たし、保育士の愛情豊かな受容的
   な関わりにより、気持ちのよい生活ができるようにする。
 (5) 授乳は、抱いて微笑みかけたり、優しく言葉をかけたりしながら、ゆったりとした気持ちで行う。
 (6) ミルク以外の味やスプーンから飲むことに慣れるようにし、嘱託医などと相談して一人一人の子どもの状態に応じて離乳を開始する。
 (7) 一人一人の子どもの生活のリズムを大切にしながら、安心してよく眠れるように環境を整える。
 (8) おむつが汚れたら、優しく言葉をかけながらこまめに取り替え、きれいになった心地よさを感じることができるようにする。
 (9) 一人一人の子どもの状態に応じて、嘱託医などと相談して、積極的に健康増進を図る。
 (10) 室内外の温度、湿度に留意し、子どもの健康状態に合わせて衣服の調節をする。
 (11) 授乳、食事の前後や汚れたときは、優しく言葉をかけながら顔や手を拭く。
 (12) 立位で抱かれたり、屈伸、腹ばいなど体位を変えてもらって遊びを楽しむ。
 (13) 子どもに優しく語りかけをしたり、歌いかけたり、泣き声や喃語に答えながら、保育士との関わりを楽しいものにする。
 (14) 優しく言葉をかけてもらいながら、聞いたり、見たり、触ったりできる玩具などで遊びを楽しむ。

5 配慮事項
 (1) 身体機能の未熟性が強く、病気にかかりやすく、また、生命の危険に陥りやすいため、体の状態の急激な変化に対応できるように一人一人の子どもの状態を十分に観察する。
 (2) 一人一人の子どもの発育・発達の状態を適切に把握し、家庭と連携をとりながら、個人差に応じて保育する。
 (3) 低月齢の子どもであることから、保育士の愛情をこめた日々の世話や関わりが一人一人の子どもの発育・発達及び健康状態に大きく影響することを認識して保育する。
 (4) 生理的諸機能の未熟性が強く、時には疾病異常の発生や生命の危険につながることもあり、十分に注意して保護・世話をしなければならない。特に、おむつのあて方や衣服の着せ方、寝具の調節、保育室の温度や湿度の調整、安全の確保に心がけるなどをきめ細かく行う。
 (5) 愛情豊かな特定の大人との継続性のある応答的で豊かな関わりが、子どもの人格形成の基盤となり、情緒や言葉の発達に大きく影響することを認識し、子どもの様々な欲求を適切に満たし、子どもとの信頼関係を十分に築くように配慮する。
 (6) 授乳や食事は清潔に行えるように配慮し、子どもの個人差や健康状態に十分に注意を払う。授乳は、必ず抱いて、子どもの楽な姿勢で行う。一人一人の子どもの哺乳量を考慮して授乳し、哺乳後は、必ず排気させ、吐乳を防ぐ。
 (7) 睡眠に当たっては、保育室から離れることなく、環境条件や衣類、寝具のかけ方などに注意するとともに、仰向けに寝かせ、呼吸や顔色、嘔吐の有無など睡眠時の状態をきめ細かに観察し、記録する。特に、乳児の死亡原因として、それまで元気であった子どもが何の前ぶれもなく睡眠中に死亡することがある乳幼児突然死症候群があり、保育中にも十分気配りをする。
 (8) 健康増進を図るための活動は、一人一人の子どもの発育・発達状態、健康状態や気候、身につけるものに注意するとともに、発汗など体の状態を十分に観察してから行い、活動後は必要に応じて水分を与える。
 (9) 保育室や子どもの身の回りの環境や衣類、寝具、玩具などの点検を常に行い、不潔な状態や危険のないように配慮する。
 (10) 快適に過ごせるように、衣服は、家庭と連携をとり、清潔で肌ざわりのよい、ゆったりとしたものを着せるように配慮する。
 (11) 保育室は、気候に応じてその温度、湿度などの環境保健に注意を払うとともに、室内環境の色彩やベッドなどの備品の配置にも配慮し、一人一人の子どもの発育・発達状態、健康状態に応じ、さらには情緒の安定のためにその都度適切に整える。
 (12) 目覚めているときは、できるだけ個別に抱き上げたり、玩具を見せてあやすなど人に対する関心や周囲に対する興味が育つように配慮する。首がすわっていない子どもは、抱くときには必ず保育士の手で頭を支えるようにする。また、抱き上げてあやすときにも、あまり強く体を揺すらないように配慮する。
 (13) 玩具などは、大きさ、形、色、音質など子どもの発達状態に応じて適切なものを選び、遊びを通して感覚の発達に効果あるものとなるように配慮する。


保育指針研究会
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