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保育所保育指針
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   第五章 一歳三か月から二歳未満児の保育の内容

1 発達の主な特徴
  子どもは、この時期、歩き始め、手を使い、言葉を話すようになる。この時期には、運動機能の発達がめざましく、体つきは次第にやせぎみになっていく印象を受ける。感染症の罹患が多く、この時期の病気の大半を占めるといってもよい。つかまらずに歩けるようになり、押したり、投げたりなどの運動機能も増す。生活空間が広がり、子どもはこれまでに培われた安心できる関係を基盤として、目の前に開かれた未知の世界の探索行動に心をそそられ、身近な人や身の回りにある物に自発的に働きかけていく。その過程で、生きていく上で必要な数多くの行動を身につけていく。例えば、身近な人の興味ある行動を模倣し、活動の中に取り入れるようになる。つまむ、めくる、通す、はずす、なぐりがきをする、転がす、スプーンを使う、コップを持つなど運動の種類が確実に豊かになっていく。こうした新しい行動の獲得によって、子どもは自分にもできるという気持ちを持ち、自信を獲得し、自発性を高めていく。また、大人の言うことが分かるようになり、呼びかけたり、拒否を表す片言を盛んに使うようになり、言葉で言い表わせないことは、指さし、身振りなどで示そうとする。このように自分の思いを親しい大人に伝えたいという欲求が次第に高まってくる。そして、一歳後半には、「マンマ、ホチイ」などの二語文も話し始めるようになる。
  さらに、この時期には、ボールのやりとりのような物を仲立ちとした触れ合いや、物の取り合いも激しくなり、また、あるものを他のもので見立てるなど、その後の社会性や言葉の発達にとって欠かせない対人関係が深まり、象徴機能が発達してくる。このような外界への働きかけは、身近な人だけでなく物へも広がり、大人にとっては、いたずらが激しくなったと感じられることも多くなる。
  保育士との豊かな交流は、友達と一緒にいることの喜びへとつながり、情緒の面でも、子どもに対する愛情と大人に対する愛情とに違いが出てくるし、嫉妬心も見られるなど分化が行われる。この時期は、保育士に受け入れられることにより、自発性、探索意欲が高まるが、まだまだ大人の世話を必要とする自立への過程の時期である。

2 保育士の姿勢と関わりの視点
  保育士は子どもの生活の安定を図りながら、自分でしようとする気持ちを尊重する。自分の気持ちをうまく言葉で表現できないことや、思い通りにいかないことで、時には大人が困るようなことをすることも発育・発達の過程であると理解して対応する。歩行の確立により、盛んになる探索活動が十分できるように環境を整え、応答的に関わる。

3 ねらい
 (1) 保健的で安全な環境をつくり、体の状態を観察し、快適に生活できるようにする。
 (2) 一人一人の子どもの生理的欲求や甘えなどの依存欲求を満たし、生命の保持と情緒の安定を図る。
 (3) 様々な食品や調理形態に慣れ、楽しい雰囲気のもとで食べることができるようにする。
 (4) 一人一人の子どもの状態に応じて、睡眠など適切な休息をとるようにし、快適に過ごせるようにする。
 (5) 安心できる保育士との関係の下で、食事、排泄などの活動を通して、自分でしようとする気持ちが芽生える。
 (6) 安全で活動しやすい環境の中で、自由に体を動かすことを楽しむ。
 (7) 安心できる保育士の見守りの中で、身の回りの大人や子どもに関心を持ち関わろうとする。
 (8) 身の回りの様々なものを自由にいじって遊び、外界に対する好奇心や関心を持つ。
 (9) 保育士の話しかけや、発語が促されたりすることにより、言葉を使うことを楽しむ。
 (10) 絵本、玩具などに興味を持って、それらを使った遊びを楽しむ。
 (11) 身近な音楽に親しみ、それに合わせた体の動きを楽しむ。

4 内容
 (1) 一人一人の子どもの健康状態を把握し、異常のある場合は適切に対応する。
 (2) 一人一人の子どもの心身の発育・発達の状態を的確に把握する。
 (3) 体、衣服、身の回りにあるものを、常に清潔な状態にしておく。
 (4) 一人一人の子どもの気持ちを理解し、受容することにより、子どもとの信頼関係を深め、自分の気持ちを安心して表すことができるようにする。
 (5) 楽しい雰囲気の中で、昼食や間食が食べられるようにする。
 (6) スプーン、フォークを使って一人で食べようとする気持ちを持つようにする。
 (7) 一人一人の子どもの生活のリズムを大切にしながら、安心して午睡などをし、適切な休息ができるようにする。
 (8) おむつやパンツが汚れたら、優しく言葉をかけながら取り替え、きれいになった心地よさを感じることができるようにする。
 (9) 一人一人の子どもの排尿間隔を知り、おむつが汚れていないときに便器に座らせ、うまく排尿できたときはほめることなどを繰り返し、便器での排泄に慣れるようにする。
 (10) 室内外の温度、湿度に留意し、子どもの状態に合わせて衣服の調節をする。
 (11) 保育士の優しい言葉かけと援助で、衣服の着脱に興味を持つようにする。
 (12) 食事の前後や汚れたときは顔や手を拭いて、きれいになった快さを感じることができるようにする。
 (13) 登る、降りる、跳ぶ、くぐる、押す、引っ張るなどの運動を取り入れた遊びや、いじる、たたく、つまむ、転がすなど手や指を使う遊びを楽しむ。
 (14) 保育士に見守られ、外遊び、一人遊びを十分に楽しむ。
 (15) 好きな玩具や遊具、自然物に自分から関わり、十分に遊ぶ。
 (16) 保育士の話しかけを喜んだり、自分から片言でしゃべることを楽しむ。
 (17) 興味ある絵本を保育士と一緒に見ながら、簡単な言葉の繰り返しや模倣をしたりして遊ぶ。
 (18) 保育士と一緒に歌ったり簡単な手遊びをしたり、また、体を動かしたりして遊ぶ。

5 配慮事項
 (1) 感染症にかかることが多いので、発熱など体の状態、機嫌、食欲、元気さなどの日常の状態の観察を十分に行い、変化が見られたときは、適切に対応する。
 (2) 身体発育や精神や運動の機能の発達には、個人差が大きいことに配慮し、発育・発達の状態を正しく把握するとともに、その変化に気づいたときは的確な処置をとる。
 (3) 食欲や食事の好みに偏りが現れやすい時期なので、日常の心身の状態を把握しておき、無理なく個別に対応する。
 (4) できるだけ外での活動を行うようにするが、外に出るときは、日照や気温などに注意して、帽子や服装に配慮し、子どもの体調に合わせて無理をしないようにする。
    また、活動などにより多量に汗をかいた後は水分の補給をする。
 (5) 歩行の発達に伴い行動範囲が広がり、探索行動が活発になるので、事故が発生しやすくなる。
    また、予測できない行動も多くなるので、環境や活動の状態、子ども相互の関わりなどに十分な注意を払う。
 (6) 食事は、一人一人の子どもの健康状態に応じ、無理に食べさせないようにし、自分でしようとする気持ちを大切にする。
    また、食事のときには、一緒に噛むまねをして見せたりして、噛むことの大切さが身につくように配慮する。
 (7) 睡眠に当たっては、一人一人の子どもに適した接し方をして、十分に眠れるようにする。
    また、目覚めたときは、適切に応じるようにする。
 (8) 排泄は、ゆったりした気持ちで対応し、子どもが自分から便器に座ってみようと思うような話し方、接し方をする。
 (9) 衣類の着脱に当たっては、自分でしようとするのを励ましたり、うまくできたときはほめるなどして、自分でしようとする気持ちを大切にする。
 (10) 個人差の大きい時期なので、一人一人の子どもの発育・発達状態をよく知り、楽しい雰囲気をつくるなどして、子どもが興味を持ち、自分から遊びを楽しめるように配慮する。
    自分でしようとしているときや何かに熱中しているときには温かく見守る。
   また、子どもの発見や驚きを見逃さず受け止め、好奇心や興味を満たすようにする。
 (11) 全身を使うような遊びや手や指を使う遊びでは、子どもの自発的な活動を大切にしながら、時には保育士がやってみせるなど保育士と一緒に楽しんで遊べるようにする。
 (12) 保育士と一緒に絵本を見ながら、絵本の内容を動作や言葉で表したり、歌を歌ったりなどして、模倣活動を楽しめるようにする。
 (13) 子ども相互のけんかが多くなるが、不安感が強まらないように、保育士の優しい語りかけなどによりお互いの存在に気づくように配慮する。


保育指針研究会
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