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保育所保育指針
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   第八章 四歳児の保育の内容

1 発達の主な特徴
  子どもは、この時期、全身のバランスをとる能力が発達し、体の部分がかなり自分の意のままに使えるようになり、体の動きが巧みになる。また、各機能間の分化・統合が進み、話をしながら食べるなど、異なる二種以上の行動を同時にとるようにもなる。このような過程をたどりながら、全体として一つにまとまり、自我がしっかりと打ち立てられ、自分と他人との区別もはっきりしてくる。
  自分以外の人やものをじっくりと見るようになると、逆に見られる自分に気づき、自意識が芽生えてくる。したがって、今までのように無邪気に振る舞うことができない場面も生じる。また、目的を立てて、作ったり、描いたり、行動するようになるので、自分の思ったようにいかないのではないかと不安が生じたり、辛くなったりするなど、葛藤を体験する。このような心の動きを保育士が十分に察して、共感し、ある時は励ますことによって、子どもは、保育士がしたような方法で、他人の心や立場を気遣う感受性を持つことができるようになる。こうして、他人にも目には見えない心のあることを実感し、身近な人の気持ちが分かるようになり、情緒は一段と豊かになる。
  この頃の子どもは、心が人のみではなく、他の生き物、さらには、無生物にまでもあると思っている。これが子どもらしい空想力や想像力の展開にもつながる。また、恐れの対象は、大きな音、暗闇など物理的な現象だけでなく、オバケ、夢、一人残されることなど、想像による恐れが増してくる。
  この時期の子どもは、人だけではなく、周りのものにも鋭い関心を向け、探索を続けるなど活動的であるので、その過程で他の子どもの興味ある遊びを見たり、自分自身の体験によって土や水をはじめとした自然物や遊具などの自分を取り巻く様々なものの特性を知り、それらとの関わり方、遊び方を豊かに体得していく。その中で、仲間といることの喜びや楽しさがお互いに感じられるようになり、仲間とのつながりは強まるが、それだけに競争心も起き、けんかも多くなる。一方、この頃になると、仲間の中では、不快なことに直面しても、少しずつ自分で自分の気持ちを抑えたり、我慢もできるようになってくる。

2 保育士の姿勢と関わりの視点
  友達をはじめ人の存在をしっかり意識できるようになる。友達と一緒に行動することに喜びを見出し、一方で、けんかをはじめ人間関係の葛藤にも悩むときであり、したがって集団生活の展開に特に留意する必要がある。また、心の成長も著しく、自然物への興味・関心を通した感性の育ちに注目しなければならない。

3 ねらい
 (1) 保健的で安全な環境をつくり、快適に生活できるようにする。
 (2) 一人一人の子どもの欲求を十分に満たし、生命の保持と情緒の安定を図る。
 (3) 友達と一緒に食事をしたり、様々な食べ物を食べる楽しさを味わうようにする。
 (4) 午睡など適切な休息をとらせ、心身の疲れを癒し、集団生活による緊張を緩和する。
 (5) 自分でできることに喜びを持ちながら、健康、安全など生活に必要な基本的な習慣を次第に身につける。
 (6) 身近な遊具や用具を使い、十分に体を動かして遊ぶことを楽しむ。
 (7) 保育士や友達の言うことを理解しようとする。
 (8) 友達とのつながりを広げ、集団で活動することを楽しむ。
 (9) 異年齢の子どもに関心を持ち、関わりを広める。
 (10) 身近な動植物に親しみ、それらに関心や愛情を持つ。
 (11) 身の回りの人々の生活に親しみ、身近な社会の事象に関心を持つ。
 (12) 身近な環境に興味を持ち、自分から関わり、身の回りの物事や数、量、形などに関心を持つ。
 (13) 人の話を聞いたり、自分の経験したことや思っていることを話したりして、言葉で伝える楽しさを味わう。
 (14) 絵本、童話、視聴覚教材などを見たり聞いたりして、イメージを広げ、言葉を豊かにする。
 (15) 身近な事物などに関心を持ち、それらの面白さ、不思議さ、美しさなどに気づく。
 (16) 感じたことや思ったこと、想像したことなどを様々な方法で自由に表現する。

4 内容
 〔基礎的事項〕
 (1) 一人一人の子どもの平常の健康状態や発育・発達状態を把握し、異常を感じる場合は速やかに適切な対応をする。また、子どもが自分から体の異常を訴えることができるようにする。
 (2) 施設内の環境保健に十分に留意し、快適に生活できるようにする。
 (3) 一人一人の子どもの気持ちや考えを理解して受容し、保育士との信頼関係の中で、自分の気持ちや考えを安心して表すことができるなど、情緒の安定した生活ができるようにする。
 (4) 食事、排泄、睡眠、休息など生理的欲求が適切に満たされ、快適な生活や遊びができるようにする。

 「健康」
 (1) 食べ慣れないものや嫌いなものでも少しずつ食べようとする。
 (2) 排泄やその後の始末などは、ほとんど自分でする。
 (3) 嫌がるときもあるが、保育士が言葉をかけることなどにより午睡や休息をする。
 (4) 衣服などの着脱を順序よくしたり、そのときの気候や活動に合わせて適宜調節をする。
 (5) 自分で鼻をかんだり、顔や手を洗うなど、体を清潔にする。
 (6) 体の異常について、自分から保育士に訴える。
 (7) 危険なものや場所について分かり、遊具、用具などの使い方に気をつけて遊ぶ。
 (8) 進んで外で体を十分に動かして遊ぶ。
 (9) 遊具、用具や自然物を使い、様々な動きを組み合わせて積極的に遊ぶ。

 「人間関係」
 (1) 保育士や友達などとの安定した関係の中で、いきいきと遊ぶ。
 (2) 自分のしたいと思うこと、してほしいことをはっきり言うようになる。
 (3) 友達と生活する中で、きまりの大切さに気づき、守ろうとする。
 (4) 保育士の言うことや友達の考えていることを理解して行動する。
 (5) 身の回りの人に、いたわりや思いやりの気持ちを持つ。
 (6) 手伝ったり、人に親切にすることや、親切にされることを喜ぶ。
 (7) 他人に迷惑をかけたら謝る。
 (8) 共同のものを大切にし、譲り合って使う。
 (9) 年下の子どもに親しみを持ったり、年上の子どもとも積極的に遊ぶ。
 (10) 地域のお年寄りなど身近な人の話を聞いたり、話しかけたりする。
 (11) 外国の人など、自分とは異なる文化を持った人の存在に気づく。

 「環境」
 (1) 身近な動植物の世話を楽しんで行い、愛情を持つ。
 (2) 自然や身近な事物・事象に触れ、興味や関心を深める。
 (3) 身近にある公共施設に親しみ、関わることを喜ぶ。
 (4) 身近にある乗り物に興味や関心を示し、それらを遊びに取り入れようとする。
 (5) 自分のもの、人のものを知り、共同のものの区別に気づき、大切にしようとする。
 (6) 身近な大人の仕事や生活に興味を持ったり、それらを取り入れたりして遊ぶ。
 (7) 身近にある用具、器具などに関心を持ち、いじったり、試したりする。
 (8) 具体的な物を通して、数や量などに関心を持ち、簡単な数の範囲で数えたり比べたりすることを楽しむ。
 (9) 身の回りの物の色、形などに興味を持ち、分けたり、集めたりして遊ぶ。
 (10) 保育所内外の行事に楽しんで参加する。

 「言葉」
 (1) 日常生活に必要なあいさつをする。
 (2) 話しかけられたり、問いかけられたりしたら、自分なりに言葉で返事をする。
 (3) 身の回りの出来事に関する話に興味を持つ。
 (4) 友達との会話を楽しむ。
 (5) 見たことや聞いたことを話したり、疑問に思ったことを尋ねる。
 (6) 保育士の話を親しみを持って聞いたり、保育士と話したりして、様々な言葉に興味を持つ。
 (7) 絵本や童話などを読み聞かせてもらい、イメージを広げる。

 「表現」
 (1) 様々なものの音、色、形、手ざわり、動きなどに気づき、驚いたり感動したりする。
 (2) 友達と一緒に音楽を聴いたり、歌ったり、体を動かしたり、楽器を鳴らしたりして楽しむ。
 (3) 感じたこと、思ったことや想像したことなどを様々な素材や用具を使って自由に描いたり、作ったりすることを楽しむ。
 (4) 童話、絵本、視聴覚教材などを見たり、聞いたりしてイメージを広げ、描いたり、作ったり様々に表現して遊ぶ。
 (5) 作ったものを用いて遊んだり、保育士や友達と一緒に身の回りを美しく飾って楽しむ。
 (6) 身近な生活経験をごっこ遊びに取り入れて遊ぶ楽しさを味わう。

5 配慮事項
 〔基礎的事項〕
 (1) 一人一人の子どもの平常の健康状態を把握し、異常に気づいたら優しく問いかけをし、子どもがその状態を話すことができるように配慮するとともに、必要に応じて、速やかに適切な対処をする。
 (2) 施設内の採光、換気、保温、清潔など環境保健に配慮する。
 (3) 子どもの気持ちを温かく受容し、個人差を考慮して、子どもが安定して活動できるように配慮する。

 「健康」
 (1) 健康、安全など生活に必要な基本的な習慣は、一人一人の子どもと保育士の親密な関係に基づいて、日常生活の直接的な体験の中で身につくように配慮する。
 (2) 子どもの冒険心を大切にし、新しい運動や遊びに対する不安や恐れを取り除くなどして、いきいきとした活動が展開できるように配慮する。
 (3) 子どもの生活や経験と遊離した特定の運動や無理な技能の修得に偏らないように配慮する。

 「人間関係」
 (1) 集団の活動に参加するときは、一人一人の子どもが、それぞれの欲求を満たすことができるよう配慮する。
 (2) 友達とのけんかを経験しながら、次第に相手の立場の理解が進み、時には自分の主張を抑制することによって、楽しく遊べることに気づくように配慮する。
   その際、保育士の優しいまなざしが向けられるようにすることが大切である。

 「環境」
 (1) 動植物の飼育や栽培の手伝いを通して、それらへの興味や関心を持つようにし、その成長・変化などに感動し、愛護する気持ちを育てるようにする。
 (2) 家庭や地域の実態に即して、様々な経験ができるようにし、子どもの発見や驚きを大切にして、社会や自然の事象に関心を持つように配慮する。
 (3) 数、量、形などについては、直接それらを取り上げるのではなく、生活や遊びの中で子ども自身の必要に応じて、具体的に体験できるようにして数量的な感覚を育てるように配慮する。

 「言葉」
 (1) 保育士との間や子ども同士で話す機会を多くし、その中で次第に聞くこと、話すことが楽しめるように配慮する。
 (2) 日常会話や絵本、童話、詩などを通して、様々な言葉のきまりや面白さなどに気づき、言葉の感覚が豊かになるように配慮する。

 「表現」
 (1) 子どものイメージが湧き出るような素材、玩具、用具、生活用品などを用意して、のびのびと表現して遊ぶことができるように配慮する。
    保育士の言動は、子どもが美しいものを感じたり、よいものを選んだりすることに強い影響を及ぼすので、それに留意する。
 (2) 子ども同士の模倣や認め合いを大切にしながら、表現する意欲や創造性を育てるように配慮する。
 (3) 表現しようとする気持ちを大切にし、生活や経験と遊離した特定の技能の修得に偏らないように配慮する。


保育指針研究会
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