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保育所保育指針
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   第一二章 健康・安全に関する留意事項

  保育所の保育においては、子どもの健康と安全は極めて重要な事項であり、一人一人の子どもに応じて健康・安全に留意するとともに、全体の子どもの健康を保持し、安全を守るように心掛けることが大切である。そのためには、一人一人の子どもの心身の状態や発育・発達状態を把握し、第一章総則及び第三章から第一〇章の各年齢別のねらい及び内容の中で関連する事項に留意するとともに、以下に示す留意事項に基づき、日々健康で安全な保育を目指すよう努めることが必要である。

1 日常の保育における保健活動
 (1) 子どもの健康状態の把握
  ア 子どもの心身の状態に応じた保育を行うためには、子どもの状態を十分に把握しておくことが望ましい。それには、嘱託医の指導の下、保護者からの情報とともに、母子健康手帳等も活用して、適切に把握するように努める。この場合、守秘義務の徹底を図らなければならない。
  イ 登所時において、子どもの健康状態を観察するとともに、保護者から子どもの状態について報告を受けるようにする。また、保育中は子どもの状態を観察し、何らかの異常が発見された場合には、保護者に連絡するとともに、嘱託医やその子どものかかりつけの医師などと相談するなど、適切な処置を講ずる。
  ウ 子どもの身体を観察するときに、不自然な傷、やけど、身体や下着の汚れ具合等を併せて観察し、身体的虐待や不適切な養育の発見に努める。

 (2) 発育・発達状態の把握
   子どもの発育・発達状態の把握は、保育の方針の決定や子どもの健康状態を理解する上で必要であるので、体重、身長、頭囲、胸囲などの計測を定期的に行うとともに、バランスのとれた発育に配慮する。また、必要に応じて、精神や運動の機能の発達状態を把握することが望ましい。

 (3) 授乳・食事
  ア 乳幼児期の食事は、生涯の健康にも関係し、順調な発育・発達に欠くことができない重要なものであり、一人一人の子どもの状態に応じて摂取法や摂取量などが考慮される必要がある。
  イ 調乳は、手を清潔に洗った後、消毒した哺乳瓶、乳首を用い、一人一人の子どもに応じた分量で行う。
  ウ 授乳は、必ず抱いて、子どもの楽な姿勢で行う。一人一人の子どもの哺乳量を考慮して授乳し、哺乳後は必ず排気させ、吐乳を防ぐ。また、授乳後もその他の体の状態に注意する。
  エ 母乳育児を希望する保護者のために、冷凍母乳による栄養法などの配慮を行う。冷凍母乳による授乳を行うときには、十分に清潔で衛生的な処置が必要である。
  オ 子どもの発育・発達状態に応じて、ほぼ五か月頃より離乳を開始する。離乳の進行に当たっては、一人一人の子どもの発育・発達状態、食べ方や健康状態を配慮するとともに、次第に食品の種類や献立を豊富にし、栄養のバランスにも気をつける。その際、嘱託医などにも相談し、家庭との連絡を十分に行うことが望ましい。
  カ 栄養源の大部分が乳汁以外の食品で摂取できるようになるほぼ一歳から一歳三か月を目安に、遅くとも一歳六か月までに離乳を完了させ、徐々に幼児食に移行させる。また、飲料として牛乳を与える場合には、一歳以降が望ましい。
  キ 離乳食を始め、子どもの食事の調理は、清潔を保つように十分注意するとともに、子どもの発育・発達や食欲、さらに咀嚼や嚥下の機能の発達に応じて食品の種類、量、大きさ、固さを増し、将来のよい食習慣の基礎を養うように心がける。
    また、保育所での食事の状況について、家庭と連絡をとることが大切である。離乳食、幼児食などを与えた際、嘔吐、下痢、発疹などの体の状態の変化を常に観察し、異常が見られたときには、安易な食事制限などは行わず、保護者や嘱託医などと相談して、食事について必要な処置を行う。さらに、食事を与えるときには、その子どもの食欲に応じて、無理強いしないように注意する。

 (4) 排泄
  ア 排泄・排便の回数や性状は健康状態を把握する指標となるので、その変化に留意する。その際、家庭と密接な連携をとることが望ましい。
  イ 発達状態に応じて、排泄の自立のための働きかけを行うが、無理なしつけは自立を遅らせたり、精神保健上も好ましくないので、自立を急がせないように留意する。

 (5) 健康習慣・休養・体力づくり
  ア 虫歯の予防に努めるとともに、虫歯予防に関心を持たせる。
  イ 歯ブラシ、コップ、タオル、ハンカチなどは、一人一人の子どものものを準備する。
  ウ 季節や活動状況に応じて、子どもの疲労に注意して、適切な休養がとれるように配慮する。また、休養の方法は、一人一人の子どもに適したものとし、必ずしも午睡に限定することなく、心身の安静が保てるような環境の設定に配慮する。
  エ 午睡の時には、一人一人の子どもの状態に応じて、寝つきや睡眠中及び起床時の状態を、適宜観察するなどの配慮をする。
  オ 子どもは、一人一人の状況に応じた健康の維持増進が必要であり、保育の中で積極的に体力づくりを導入するように配慮する。体力づくりは、一人一人の子どもの状態、季節・気候に応じてその項目・程度を決めて安全に注意して実施する。

2 健康診断
 (1) 子どもの健康状態の把握のため、嘱託医などにより定期的に健康診断を行う。また、子どもの日常の健康状態を適切に把握するためには、保育士の日頃の観察が必要であるとともに、保護者との密接な連携が必要である。
 (2) 入所に際しては、事前に一人一人の健康状態や疾病異常などの把握ができるように留意する。
 (3) 診察、計測、検査、子どもの健康状態や発育・発達状態・疾病異常の有無の把握などについては、嘱託医と話し合いながら実施し、年月齢に応じた項目を考慮する。
    また、精神保健上の問題などについても把握できるようにする。
 (4) 健康診断などの結果を記録し、保育に活用するように努めるとともに、家庭に連絡し、保護者が子どもの状態を理解できるようにする。さらに、必要に応じて、嘱託医などによる保護者に対する相談指導を行う。
 (5) 診察、計測、検査などの結果については、母子健康手帳を有効に活用し、市町村や保健所が実施する健康診査、保健指導などの保健活動と相互に連携する上で役立てるようにする。
 (6) 結果に応じて市町村や保健所、医療機関と連携をとり、必要によっては協力を求める。

3 予防接種
 (1) 予防接種は、子どもの感染症予防上欠くことのできないものであり、一人一人のかかりつけの医師や嘱託医の指導の下に、できるだけ標準的な接種年齢の内に接種を受けるように保護者に勧める。
 (2) 子どもが個々に予防接種を実施した場合は、保育所に連絡するように指導する。
    また、接種後は、子どもの状態を観察するように努める。

4 疾病異常等に関する対応
 (1) 感染症
  ア 保育中に、感染症の疑いのある病気の子どもを発見したときは、嘱託医に相談して指示を受けるとともに、保護者との連絡を密にし、必要な処置をする。
  イ 保育所で、感染症の発生が分かったときには、嘱託医の指導の下に、他の保護者にも連絡をとる。感染症にかかった子どもについては、嘱託医やかかりつけの医師の指示に従うように保護者の協力を求める。特に、いわゆる学校伝染病として定められている病気にかかった子どもが保育所に再び通い始める時期は、その出席停止期間を基本とし、子どもの回復状態に応じて、他の子どもへの感染の防止が図られるよう、嘱託医やかかりつけの医師などの意見を踏まえて、保護者に指導する。また、学校伝染病に定められていない感染症については、嘱託医などの指示に従う。

 (2) 病気の子どもの保育
  ア 地域内に乳幼児健康支援一時預かり事業などの実施施設があるときには、保護者にその利用についての情報提供に努める。
  イ 保育中に体調が悪くなった子どもについては、嘱託医などに相談して、適切な処置が行えるように配慮しておくことが望ましい。

 (3) 救急処置
   不時の事態に備え、必要な救急用の薬品、材料を整備するとともに、救急処置の意義を正しく理解し、保育士としての処置を熟知するように努める。

 (4) 慢性疾患
   日常における投薬、処置については、その子どもの主治医又は嘱託医の指示に従うとともに、保護者や主治医との連携を密にするように努める。また、対象となる子どもに対する扱いが特別なものとならないように配慮し、他の子ども又は保護者に対しても、病気を正しく理解できるように留意する。

 (5) 乳幼児突然死症候群(SIDS)の予防
  ア 乳幼児期、特に生後六か月未満の乳児の重大な死亡の原因として、それまで元気であった子どもが何の前ぶれもなく睡眠中に死亡する乳幼児突然死症候群があり、保育中にも十分留意する必要がある。
  イ この予防には、その危険要因をできるだけ少なくすることが重要であり、特に、寝返りのできない乳児を寝かせる場合には、仰向けに寝かす。また、睡眠中の子どもの顔色、呼吸の状態をきめ細かく観察するように心がける。また、保護者に対しても、SIDSに関する情報の提供を徹底するとともに、予防に努めるよう指導することが望ましい。
  ウ 保育所職員や保護者は、保育室での禁煙を厳守する。

 (6) アトピー性皮膚炎対策
  ア アトピー性皮膚炎が疑われるときには、その対応については、必ず嘱託医などの診断を受け、その指示に従うことを原則とするとともに、家庭との連絡を密にし、その対応に相違がないように十分に心がけるようにする。
  イ 食物によると思われるときにも、原因となるアレルゲンの種類が多いので、安易な食事制限やみだりに除去食を提供せず、必ず嘱託医などの指示を受けるようにする。
  ウ 皮膚を清潔にすることが大切であり、保育中も皮膚を清潔に保つように努めることが望ましく、特に、使用する洗剤等については、嘱託医などに相談して用いるようにする。
  エ 戸外遊び、衣服の素材によっては、症状が増悪することもあるので、嘱託医などに相談して用いるようにする。
  オ 痒さが強いときには、安易に軟膏を塗布するのではなく、嘱託医などに相談することが望ましい。

5 保育の環境保健
 (1) 各部屋の温度、湿度、換気、採光等に十分注意し、保育上の安全にも十分に配慮する。子どものベッド、寝具類は、いつも清潔を保つように心がける。
 (2) 園庭や砂場は清潔で安全な状態を保つように配慮する。また、動物小屋はできるだけ清潔が保てるように配慮し、動物による事故の防止に注意する。

6 事故防止・安全指導
 (1) 子どもは、その発達上の特性から事故の発生が多く、それによる傷害は子どもの心身に多くの影響を及ぼす。事故防止は保育の大きな目標であることを認識する必要がある。
    保育士は、子どもの事故発生についての知識を持つとともに、保護者に対しても子どもの事故について認識を深めるための協力を求める。
 (2) 子どもの発達に合わせた安全指導の必要性を認識し、適宜その実施に努める。
   また、交通事故の防止に配慮し、家庭、地域の諸機関との協力の下に、交通安全のための指導を実施する。
 (3) 災害時に備えて職員その他の人達による組織づくりを行い、その役割分担などを認識する。
    子どもに対しては、その発達に応じて避難訓練の目的、意義を理解させ、訓練に参加させる。
    保育士は避難訓練の意義を理解し、それを積極的に行い、必要な機材、用具などの使用法を熟知しておく。また、地域住民にも参加を求めるなどの配慮をする。
 (4) 子どもの通所は、保護者が責任を持って行うことを原則とし、責任ある人以外の人に子どもを同行させないようにする。
    また、随時一人一人の子どもの確認を行うように努める。

7 虐待などへの対応
 (1) 虐待の疑いのある子どもの早期発見と子どもやその家族に対する適切な対応は、子どもの生命の危険、心身の障害の発生の防止につながる重要な保育活動と言える。
  ア 虐待の保育現場における早期発見は、登所時や保育活動中のあらゆる機会に可能であるので、子どもの心身の状態や家庭の態度などに十分に注意して観察や情報の収集に努める。
  イ 虐待が疑われる子どもでは、次のような心身の状態が認められることがある。発育障害や栄養障害、体に不自然な傷・皮下出血・骨折・やけどなどの所見、脅えた表情・暗い表情・極端に落ち着きがない・激しい癇癪・笑いが少ない・泣きやすいなどの情緒面の問題、言語の遅れが見られるなどの発達の障害、言葉が少ない・多動・不活発・乱暴で攻撃的な行動、衣服の着脱を嫌う、食欲不振・極端な偏食・拒食・過食などの食事上の問題が認められることもある。
  ウ 理由のない欠席や登所時刻が不規則なことが多い、不潔な体や下着、病気や傷の治療を受けた気配がない等の不適切な養育態度が認められることもある。
  エ 家庭の態度としては、子どものことについて話したがらない、子どもの身体所見について説明が不十分であったり、子どものことに否定的な態度を示すなど、子どもを可愛がる態度が見受けられず、必要以上にしつけが厳しく、またはよく叱ることがある。
 (2) 虐待が疑われる場合には、子どもの保護とともに、家族の養育態度の改善を図ることに努める。この場合、一人の保育士や保育所単独で対応することが困難なこともあり、嘱託医、地域の児童相談所、福祉事務所、児童委員、保健所や市町村の保健センターなどの関係機関との連携を図ることが必要である。

8 乳児保育についての配慮
  乳児期の初期は、まだ、出生前や出生時の影響が残っていることがあったり、心身の未熟性が強いので、乳児の心身の状態に応じた保育が行えるように、きめ細かな配慮が必要である。
  乳児は、疾病に対する抵抗力が弱く、また、かかった場合にも容易に重症に陥ることもある。特に、感染症にかかりやすく、さらに心身の未熟に伴う疾病異常の発生も多い。そのために、一人一人の発育・発達状態、健康状態の適切な判断に基づく保健的な対応と保育が必要である。保健婦、看護婦が配置されている場合には、十分な協力と綿密な連携の下に、嘱託医の指導によって適切な保育の計画を立て、毎日の保育を実践するとともに、乳児の日常生活や感染予防についての保護者の相談にも応ずることが望ましい。

9 家庭、地域との連携
 (1) 保育所における子どもの生活、健康状態、事故の発生などについて、家庭と密接な連絡ができるように体制を整えておく。
    また、保護者がこれらの情報を保育所に伝えるように協力を求める。
 (2) 保育所は、日常、地域の医療・保健関係機関、福祉関係機関などと十分な連携をとるように努める。
    また、保育士は、保護者に対して、子どもを対象とした地域の保健活動に積極的に参加することを指導するとともに、地域の保健福祉に関する情報の把握に努める。


保育指針研究会
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